この夜間航行については事前に色々な角度から研究しました。
初めての艇、初めての場所。しかも行く手は名うての船舶輻輳海域である備讃瀬戸航路です。その先にはやはり潮流で有名な鳴門海峡、明石海峡が待っています。こんなところを夜間航行で走って良いものか?!
この夜間航海に関しては出航前のルート決定でるみいさんさんと散々話し合って出た結論です。夜間航海の条件として
「昼間に走った感触で完全手放し運転が出来るほどの海の状態だったらやってみよう。瀬戸内海のルートは全てが本船航路を走る予定だから網の心配は無い。レーダーワッチ、肉眼ワッチ、操船と手分けをして夜間航海をやってみよう。」
このような結論が出たのです。
今回の廻航では日程的に厳しいものがありましたし、瀬戸内海を出て太平洋に向かえば厳しい海況が予想されており、風待ち波待ちを余儀なくされるだろう。その様な予想の元4日間なりで東京にたどり着くにはやはりどうしても2日目の朝には紀伊半島の中程までは進んでおきたい・・・・。
こんな思いもあって当直制でオーバーナイトクルーズをすることとなったわけです。
幸い昼間走った限りでは全く問題が無いと実感したために、予定通り夜間航行に踏み切りました。
17:00頃日没の仁尾マリーナを後にし、本船航路までは入港ルートを逆にたどって戻ります。本船航路まで出る間にどんどん暗くなっていく・・・。何度やってもこの日没時というのが一番不安感を掻き立てられますね。本船航路に出るまで真向かいに西風にぶつかるためかなり叩かれました。スプレーも盛大に浴びて・・・。そうするとハードオーニングのガラスが見えなくなってしまう!予想以上に視界を遮りました。ここで天の恵みは片側のガラスが割れてくれたこと。こちら側の視界を頼りに進みます。40分ほど波に耐えて、障害物の心配が無くなったらいよいよ本船航路です。
本船航路に入ってからは街が近くに有るために非常に明るく見通しも良く航路ブイもしっかりしており座礁の心配、網の心配も無くなり順潮に進みました。すぐに備讃瀬戸南航路に入り本船を縫う様にして快走です。
20:30 12knotの速度制限区域に入り備讃マーチスの指示を耳にしながら瀬戸大橋に臨みます。初めはるか彼方の水平線がぼ〜っと黄色く光っていたかと思うとだんだん光の列になり、それが夜空に浮かび上がる光の架け橋となり・・・素晴らしい眺めでした。レーダーにもくっきりとその姿が一直線に浮かび上がり、思わず「お〜」っという叫び声が上がりました。今度は是非昼間も見てみたいものです。
瀬戸大橋を過ぎる頃、マリンVHF16chから「備讃瀬戸東航路宇高西航路交差点に小型船舶が航行中、各船注意されたし」と流れてきた。ん??俺達のことか??と大爆笑の一同でした。
その後備讃瀬戸東航路を抜け速度制限がなくなったので17knotで快調に飛ばしていく。本来なら紀伊半島を回るためには鳴門海峡を通るのが近道。しかし事前のコース検討段階で海図を見ると世にも恐ろしいほどの事が書いてある。ちょうど転流時に当たれば良いですが今回は時間が悪い。さすがに夜間に抜けようとは思いませんでした。そのためはるか右手に鳴門海峡大橋の灯かりを見つつ、播磨灘の真ん中を明石海峡に向けてひた走りに走ります。ちょうど淡路島を時計周りに回り込むのです。
この頃から開けた水面に出、灯かりもなく新月の曇天だったためかなり暗くなってきました。先ほど備讃瀬戸航路を走るとき大活躍してくれたナイトビジョンも役に立たなくなってきました。しかも西風が強く大分荒れてきました。波高2mくらいはあるでしょうか?ひたすら我慢です。
さてここでまたトラブル発生!ふと気づくとどうも足元がつるつる滑る。何事かと思って懐中電灯で見てみると、なんとステアリングオイルが漏れているではありませんか!まだステアリングの感触はしっかりしていますがいつ効かなくなるかもしれない。幸い2軸シャフトなんである程度の操航は出来ます。いざというときの心の準備をしてコンソールの中に潜り込んでみました。するとどうやらオートヘルムのパイプのコネクターがぶっちぎれた様。「これなら何とかなる!」
そう思って漏れを止めるべく悪戦苦闘の30分。何とか無事漏れは収まりました。ここまでもう12時間以上も走り詰めです。久しぶりに走ったから艇もびっくりしちゃったのかもしれませんね。
我慢我慢の2時間が過ぎようやく彼方に神戸の灯が見え、はるかに明石海峡大橋が見えてきました。明石海峡に近づくと大分風が遮られ走りやすくなってきました。しかしまたまた潮流が激しくなってきました。そこここに潮目や渦が見えます。しかし明石海峡大橋の奇麗なこと。スケールは先程の瀬戸大橋に譲りますが、その木目細かなライティングの美しさはこちらに軍配が上がります。時まさに24:00。海峡の最狭部を越え橋をくぐろうとしたまさにその瞬間、ライトが端から順にカウントダウンするように消えていきました。ライティングのフィナーレです。なかなか幻想的でした。
難関の明石海峡航路を抜けると大阪湾です。今度は淡路島の風裏となりさっきとは打って変わって鏡のような水面を友ヶ島水道に向けてひた走りに走ります。先程の遅れを取り戻すかのようにぐいぐいとスロットルを倒し込んでいきます。しかし今夜はほぼ新月。曇天に星明かりも少なく実に暗い海でした。左手遥かには関空のライトが浮かび一際明るく輝きます。
前方左に友ヶ島灯台の強烈な光が見え始めた頃、さすがにばてて来たため予定の紀伊田辺は変更しようということになりました。無理は禁物です。
さてではどこに逃げるか?当初の予定では友ヶ島対岸の淡路島の由良港にに逃げ込むつもりであったが、港入り口には浅瀬が広がり暗夜のコース取りに不安があったため、和歌浦港に仮泊することとしました。実はogaogaの妻の実家が奈良と和歌山の県境にあり、この辺りは車で良く走り回っていて地理に明るかったのです。目指すは元リゾート博会場のマリーナシティー。今月号のオーシャンライフにも載っていましたよね。ほんとに素敵な所です。無事02:00、和歌山県、和歌山シティーヨットクラブに入港しステイとなりました。ここまで来れたら100点満点です。
皆後片付けもそうそうにすぐに深い眠りに落ちていきました・・・。
さてさてここまで奇麗だ!素晴らしい!と書いてきたのに何故画が無いのかとお叱りを受けそうですが、これが実はないんです〜。^^;
要所要所で「駄目かな〜?」と思いつつ撮るには撮ったんですがやっぱり駄目でした。思い出は私の頭の中にだけあります。皆様ごめんなさい。<m(__)m>
このレグ
17:30 仁尾マリーナ出港
20:00 瀬戸大橋通過
00:00 明石大橋下を通過 この間とっても荒れる
02:10 和歌山マリーナシティー入港 130nm