・ カワサキから新しく発売されたジェットスキーJS900STXはスポーツライド、ロングツーリング、トーイングからファミリークルージングまでなんでもこなすオールマイティーな1艇です。乗るだけで思わず走り出したくなってしまう艇。今回はそんな素晴らしい艇で子供と1日遊んでみました。
99年度ラインナップとして追加された3人乗りのジェットスキーJS900STX。エンジン以外の船体などの仕様は兄貴分とも言うべきのJS1100STXと全く同じ。言うなればJS1100STXの弟分という性格を持つミドルクラスのジェットビークルです。しかし弟分と言ってもそのパーフォーマンスはかなりのもの。他社の3人乗りのパーソナルウォータークラフト(以下PWC)はファミリークルージング向けのゆったりとした乗り味のものが多いのですが、このカワサキの新しい3人乗りは私たちのスポーツマインドを満たしてくれるような、素晴らしい走りのフィーリングを持っています。それもそのはず、兄貴分のJS1100STXは昨年度のPWC世界選手権で優勝した実績を誇るのです。3人乗りは2人乗りに比べて大きく重く鈍重な・・・という常識を覆した素晴らしいパーフォーマンスを持つ艇、JS900STXはその素晴らしいハルをそのまま受け継いだマルチパーパスな艇なのです。しかもだからといって本来ファミリーユースやウェイクボードなどのトーイング時に求められる、安定性や快適な乗り心地というものがスポイルされているかというとそんな事はありません。安定性や乗り心地、運動性といったものが実に高い次元で融合しているのです。
今日はそんな素晴らしいJS900STXをお借りして、カワサキのジェットスキークラブ「KAZE」の南房総ツーリングに子供と一緒に参加してみました。この南房総ツーリングは千葉内房の富津岬を出発し、東京湾観音、金谷を越えて風光明媚な保田漁港までの約15海里をジェットスキーでツーリングしようというものです。
当日はそれまでの初夏を思わせるような天候とは裏腹にあいにくの雨模様。気温の方も5月としてはかなり肌寒く開催を危ぶみながら会場に向かいました。会場に着いてみると、いるはいるは、ゆうに60艇を超すPWCが浜辺にひしめき合っています。多くの同好の士が集まり、まるでレース会場を思わせるような熱気に包まれていました。小学校一年の息子も「お父さんなんかレースみたいだよ!」とはしゃぎながら走り回っています。受付を済ませゼッケンをもらって着替えるとぐっと気持ちが引き締まってきました。もらったゼッケンはなんと107番。実に100人以上がこのツーリングに集まったんですね。その間ビーチではあちこちでPWCを降ろす作業が続いています。実はこのPWCの上げ下ろしというのは結構な重労働なのですが、参加者達が率先してお互い助け合うというとっても素適な光景があちこちで見られました。さすが一つの目的を持った仲間意識です。
皆無事に受付や愛艇の準備が終わりいよいよ開会式です。主催者のカワサキからの挨拶や安全運転の講習、地元のショップからのローカルルールとマナーの説明がありました。今後とも楽しく遊ぶためにはルールとマナーを守って無事故でと、基本的なことですがとても大切な事です。私も改めて肝に銘じました。
開会式が終わると参加者全員でビーチのゴミ拾いです。ビニール袋片手に拾っていくとほんとに色々なものもありますね。もちろん息子も一緒にゴミ拾いです。「まったくゴミ捨てちゃ駄目だよね。僕は絶対捨てないよ。」とうれしい言葉。遊びを通じてこう言ったことを教えられるって素適です。親として良かったなと思う一瞬でした。
全員でやるとほんの数分であっという間にトラック山盛り一杯のゴミが集まりました。中には大きなテントの鉄骨を運ぶツワモノも・・・。
さてゴミ拾いも終わりいよいよスタートです。前日くらいまでは「半袖のウエットスーツでも大丈夫」と思っていたのですが、当日の寒さに思わずドライスーツを着てしまいました。息子もだぶだぶのドライスーツを着込んで整列です。
浜辺に出ると今日お借りするJS900STXとの対面です。フラッシュイエローの鮮やかなカラーリングにオプションのツーリングバックが付いていました。このツーリングバックにバウの大型コンパートメントやシート下の小物入れを加えるとかなりの荷物が入ります。家族で1日ピクニックに行くくらい簡単に出来そう。それでいてこのバック、デザイン的にぴったりマッチしてとてもお洒落な本格ツアラーという雰囲気です。
沖に出て皆なが集合するのを待っていると、出発する前の高揚感に息子もおおいにはしゃいでいます。幸い心配していた雨も上がり海は凪ぎ、楽しいツーリングが出来そうです。伴走するカメラ艇の準備も整いさあ出発。息子はカメラ艇に乗るおじいちゃんにしきりに手を振っています。私の親父はとうに還暦を過ぎていますが現役のジェット乗り。親子3代でライディングを楽しんでいます。本当は今日もジェットスキーで参加するはずだったのですが、風邪を引いてしまい今回はカメラ艇から応援です。
第一目標は5海里離れた東京湾観音前のビーチ。右を見ても左を見ても見渡す限りのジェットスキーの群れは実に壮観な眺めでした。ジェットスキーといえば、ただスピードを出して走り回るだけと思っていらっしゃる方も多いでしょうが、こう言った皆なで一緒に走るというのもとても楽しいんです。まさにツーリングの醍醐味ですね。私はというと回りに注意しながら息子にハンドルとスロットルを任せて、「ほらもうちょっと右右。もう少しスピードを出して。」と指示しながらの遊覧気分。ちょうどゴーカートで遊んでいるような感覚です。車ではとてもこんな真似は出来ないですがジェットスキーでは簡単に楽しめます。免許制度により日本では16歳になるまで1人では操船出来ませんが、海外ではちょうどモトクロスに乗るように小さいうちから乗っています。「うちの息子も今から鍛えておけば将来はレーサーも夢ではないかも・・・。」と親馬鹿な妄想にふけるなんて言うのもジェットスキーの楽しみかもしれません。そんな親の妄想を知ってか知らずか、息子は楽しげにスロットルを握っていきます。
海が凪いではいても数十艇のPWCが走り回ればかなり波立ち、派手なスプレーを上げることもしばしば。でもJS900STXは自慢のカワサキスプラッシュデフレクター(KSD)のおかげでほとんどしぶきを被りません。実に快適に走れました。
程なく東京湾観音のビーチが見えてきました。先着隊は既に浜辺にビーチングしています。気軽にビーチング出来るという機動性の高さもジェットスキーの魅力。海からしか来られない浜辺に着くと息子は早速あちこち探検しに行きました。潮の残った磯でヒトデやヤドカリを突ついたり、普段なかなかこういった経験は出来ないのでとても良かったなと思います。30分ほど休憩していよいよ保田漁港へ。この先は距離も長いし波も高くなりそうなので「おじいちゃんと一緒にボートに乗るかい?」と聞くと、「ううん。僕最後まで行く。」と一人前の言。「じゃあ頑張るんだぞ。」と声を掛けながら出発です。
30分ほど走って金谷を過ぎた頃からさすがに疲れが見えてきました。無理もありません。大人ですらそろそろばてて来た頃。1歳からジェットスキーに乗っている息子もこんな長丁場は初めての経験。「頑張れ、頑張れ、もう少しだ。」と励ましながら走ります。息子にとっては大冒険をしているんでしょうね。だって自分の子供の時を思えば雨降り後の水溜まりに雨戸の筏で乗り出しただけでも大冒険でしたもの。
ようやくゴールの保田漁港が見えてきました。はやる心を抑えながら港内は徐行々々と。多くのジェットスキーの水音に驚き、無数の小魚が水面を跳ねるのを見て息子も大喜びです。そして浜辺に到着して「やったぜ!」と握手しました。ちょっぴり親子の絆が深まったかな?なんて思ったりして。やっぱり親馬鹿ですね。それにしても浜辺で飲んだジュースは美味しかったね。
ここで皆なで記念撮影をし給油とトイレタイムを済ませたらすぐ出発です。富津に戻れば楽しいバーベキュー、皆なお腹がぺこぺこです。さぁ走れ走れ。
お腹の空いた息子は帰路はおじいちゃんと一緒にカメラ艇に乗ることになりました。お菓子を買い込んでいそいそ乗り込んでいきました。良く頑張ったね。
往路は息子が乗っていたのでファミリーモードだったお父さん。皆なの走りを横目で見ながらちょっぴりウズウズしていました。さあ帰りは思いっきり走り回ってみるぞ。普段JS1100STXに乗っているので「JS900STXなんて簡単なものさ」と思っていましたが、これがどうして想像以上に良く走ります。ハルは全く同じ物、深い船底Vでソフトな乗り心地、しかもクイックな取りまわしもお手のものの折り紙付きのパーフォーマンスです。一方エンジンはというと900cc100Hpを装備。そうですよね。100Hpといえばほんの少し前まではハイエンドマシンだったのです。とても心地よく吹け上がり、カメラ艇の曳き波を使ってのウェーブジャンプやタイトなコーナーリング、スピンターンまで実に難なくこなせました。久しぶりに思いっきり駆け巡った気がします。兄貴分のJS1100STXと比較すると加速と最高速でこそ多少おとなしめですが、それはフラッグシップモデルと比較した場合の事。レースに使うのでない限り十分すぎるほどの動力性能です。戻ってから冗談を言ったのですが、ハルを赤く塗ってJS1100STXとデカールを貼っておけば気づかない人もいると思います。そのくらいきびきびとした走りでした。それよりもしかするとツーリングにはこちらの方が適しているかもしれません。JS1100STXだと有り余るパワーに常にスロットルに気を遣わなければならないので結構疲れます。JS900STXは走っていて気軽に全開に出来るので実に楽なんです。ただ気軽に・・・なんて言っても最高速は45knotを超えますので念のため。
こうしてみんなでスポーツライドを楽しみながら、1艇の事故もなく無事富津岬に到着し待ちに待ったバーベキューです。スタッフ心尽くしのごちそうにみんなで舌鼓を打ちました。私もカメラ艇から駆けつけた親父と息子の3人でビーチでゆっくり食事をしました。運動した後のご飯はとっても美味しかったね。その後はお楽しみの宝捜し。素適な賞品が懸かっていると聞いて、みんなで必死になって砂浜に埋まっているカードを探している光景は微笑ましくなりました。息子も無事探し当てゴーグルをもらって「これ僕のだよ?!」と大喜びです。最後にこれからの安全航行と次回の再会を約束して閉会しました。
本当は食事を終えたらウェイクボードやスキービスケットもやってみようねと言っていたのですが、寒かったしちょっと疲れてしまったのでまた次回のお楽しみにしました。こうして家族と共に楽しんだジェットスキーの一日。ジェットスキーが一台あればこんな素適な遊びが出来るのです。読者の皆さんもいかがですか?カワサキJS900STX、ファミリーユースには一押しのベストバイです。